03-12. Blurredness
「繰り返しにはなるし、守秘義務的に言えないのかもしれないけど、これで情報は足りてるのかなぁ。」
「ああ、感謝する。ぶっちゃけ、これで黙られちまったらまた相当量の聞き込みを一からしなきゃいけなかっただけの話だけどな。とはいえ、まあ守秘義務には触れない程度に話すが、俺が追ってるのは実はもうちょっと根も葉もない噂のようなもんだったりする。」
「へえ。それは興味あるな。聞かせてもらっても?」
「ああ。グリムの器って聞いたことあるか?俺自身は何年か前ぐらいからちょくちょく聞いたことがある程度の話でしかないんだが。その器ってのを持った人間は異能を操るんだとか。異能とか言われても俺にはピンと来てないんだが、実際は怪奇現象とか超能力とか霊能力だとか、色々言われてるみたいだ。で、その器がこの事件に関係してるんじゃないか、って話がある。」
「ふうん。なんでこの事件にそのグリムの器が関係していると思われたんだろう。僕には学生が麻薬の取引に絡んでしまったことで起きた痛ましい事件、という感覚の方が合う、というか、そんな不思議な点ってなんかあるのかな。その異能?が関わらないと筋が通らないような部分があるように思えないけどな。当事者だったから余計そう感じるだけかもしれないけど。」
「そこまではわからんよ、俺も。ほかの学生にも何人か話は聞いてみたけど、緑川がやっぱり一番詳しいみたいだな、今んとこ。当事者というか、サークルに所属していたなら当たり前かもしれないが。俺も聞いても、まあ学生と麻薬って組み合わせだけでもだいぶ異質な気はするが、それもなんとなくグリムの器云々ってより時代の移り変わりがそうさせてるような印象だしよ。」
「うん、同感。で、その器と事件の繋がりとかはよくわからないけど、知りたいのは事件の詳細なのかな。それともグリムの器なのかな。ちょっと曖昧になってきた感じ。」
「まあ、依頼の詳細はもちろん言えないんだが、グリムの器については、正直その存在を隠しながら追っても出会える気はしない、ってのはある。」
「ああ、だから依頼の詳細とは言わないまでも、グリムの器について僕に話したわけか。ところでその異能、ってどんな感じなんだろうね。それがわかれば、もう少し僕の体験とかから思い当たることがあったりするのかもしれないと思って。」
「んー、それがそこはよくわからん。俺自身がそんなにグリムの器について詳しくないことも一因だろうが、そもそもグリムの器ってのは一つじゃないらしいんだ。いくつもあって、それぞれの所持者が手に入れる異能は種類が異なるらしい。」
「その、グリムの器ってどうやって見分けるんだろう。あとは、僕が土門さんに伝えられる、伝えて意義のある情報はあるかなぁ……」