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「うん。そうだね。さっき、セツナに言われて気づいたんだけどさ、たしかに前任者からこの会の主催というか、連絡係を引き受けた時に聞いていた話をみんなにはまったくせずに、これまで通りの変わった話に花を咲かせてきたけれど。別にそれらの情報を共有するな、とは一言も言われていないんだ。だから、たまにはこういう情報共有があってもいいんじゃないかと思ってね。さっきジルドから指摘された通り、”非日常を多く体験しているであろう人間”なんてそうそうわからないよね。新メンバを探す方法には二種類ある。一つは、オレ自身が探して連れてくる方法なんだけど、それはオレが勝手に追加した方法なので、あとでもう少し詳しく説明しようか。元々の方法はね、依頼主からの指名なんだ。」
「指名…?つまり、誰かが抜けるとそれをドラゴンが依頼主に伝えて、依頼主から誰々を会に勧誘せよ、って感じか?」
「うん。大体そんなところだね。で、オレはそれがめちゃくちゃ気になった。みんなと同じようにどうやって探してるのか、って。ここで二つ疑問に感じた。そもそも日常的な非日常とは何か、と、どうしてオレは選ばれたのか、だ。カナメ、日常的な非日常ってどんなことだろう?」
「うーん、そうだなあ。多くの人が体験しないようなこと、という言い方はできるけれど、漠然とはしているね。これまでの集まりにおける色々な会話から、いくつかのパターンはあるように思う。例えば心霊現象のような話とか。でも偶然で片付けられるような気がするものもあるね。あとはなんだろう、超常現象なようなもの?認知の問題、それから、現在未だ認識されていない生物の話なんてもあったかな。ツチノコとかユニコーンとかそういう…、あ、ドラゴン。」
「ああ、オレのドラゴンというコードは、それもあって実はあえてそうしている。暗喩でしかないけれどね。まあ、今カナメが挙げてくれたような感じだ。じゃあさ、そういう非日常を多く体験するのってどういう人だと思う?ピネ。」
「あ、え、えっとぉ…、んー、今の話から、…するなら、例えば霊感のある人、とかでしょうか。生物学者、超能力者、とかも…?ん、でも、別にそんな人たち、集まってないですね…。んー、私たちがどうやって選ばれたか、…ってことですよね。私たち、何か共通点、ありましたっけ…。」
「うん。そうだね、ありがとうピネ。オレも似たようなことを考えたんだ。ジルドはどう思う?」
「つまり、ドラゴンはなぜ自分が選ばれたか、に注目したわけだな。俺もその視点で考えるなら、仕事の種類や、ある程度の有名人である、って辺りが関係するんじゃねぇか?バックでこの会を動かしてるのがどこの誰だかは知らねぇが、日常的に非日常を体験するような人間の情報を収集するような方法はちょっと思いつかねぇ。例えば、カナメなんてわかりやすいんじゃねぇ?」
「ああ、たしかに私はそういう意味ではある種、不本意ではあるけれど有名人であるよね。ピネとセツナは知らないだろうから、ちょうどいいね。私が体験する不思議の理由の一つだとも思うから話しておこう。私は物書きだとさっき話した通りなんだけど、最近作品が有名になってしまったんだ。」
「あ、もしかして、カナメって舞乃葉要?」
「え、…そうだったんですか…?」
「うん。私自身は別に有名になる前からアイデンティティは変わらないから、実は有名人になってしまったらしい今も自覚はないんだけどね。変に世の中に認知されてしまって困っている。一応それで生計を立てているから、おいそれとやめるわけにも行かないし。あとは、担当が色々な取材やら受賞式やらを断ってくれてるのが救いだよ。」