Grim Saga Project

01-01. 2XXX.06H01

 
 
 
 「そうだね。君の言う通りだ、セツナ。」
 
 「うん、だから僕は今ここにいるけれど、もう少しその意義を明確にしたいんだ。」
 
 「議題を明確にすれば良いだろうか。」
 
 「それも一つの手だと思う。」
 
 「そうだなあ。そうしたら、実はオレたちもお互いのことをよく知らないまま今に至っている節もある。今日は曖昧な議論は後にして、一つ自己紹介をする時間を先に取ってみるというのはどうだろう。」
 
 「私は別に構わないよ。たまにはここでハッキリした何かが会話されるというのも興味深い。」
 
 「…あの、……私、自分のことを話すのとか、その、…とても、苦手で…。」
 
 「ああ、無理をする必要はないよ。」
 
 「うん、僕ももちろんそんなつもりじゃないんだ。まだここに参加させてもらえるようになったばかりで、何もわからなくて。」
 
 「そうだよね。私も実はみんなのことをあまり知らないよ。そういう不文律でもあるのかと思ってね。自分のことをあまりさらけ出してはいけないような場なのかと思っていた。」
 
 「いや、そんなことはないんだ。ただ、ここで会話されるのは、やはり互いに日常的に体験する非日常的な出来事で、それが困った事にならないように情報共有をしたり、相互の経験や知見で助け合うことはとても大事だとは思っている。」
 
 「そうだね。これまで実際そんな話ばかりしている。うん、ちょっと今日はセツナのおかげで面白い。そうしたら、私から自己紹介をしようか。私はカナメ、と名乗っておこうか。小説家をしている。しがない物書きというやつかな。見ての通り女性なんだけど、作家としてはどういうわけか男性として活動することがあってね。性別にまつわるような困りごとなんかに不思議に多く遭遇してしまうようなんだ。」
 
 「カナメ、ありがとう。それじゃあ次は俺が話そうか。一応今のメンバでは最古参になる。偽名だがドラゴンという名で通っている。職業はあまりわかりやすいものではなくてね。表では実業家という肩書きが一番通りがいいかな。前任者から引き継いだ形で、今のところこの会を定期的に開催している。ピネはどうする?ちょっと話してみるかい?」
 
 「あ!えっと…、はい。ピネと呼ばれています。…お話するの、苦手です。…でも、お話するのが、キライなわけでは、ないんです。…あの、なんていうか、何か、言おうとすると、うまく言葉が、えーっと、出て来なくて…。」
 
 「ピネさん、ありがとうございます。僕は今日初めて参加させてもらっていて、本当に何もわからないので、助かりました。ゆっくりお話していきましょう。」
 
 「あ、はい。…セツナさん、ありがとう。」