06. たゆたいの水面に一雫から波紋
「会議室03を押さえました。」
「ありがとう。娘たちの居場所は?」
「今のところわかりませんが、入口付近かと。」
「まあそうか。セキュリティカードもなくて入れる部屋など限られている。それじゃあ、入口脇の応接スペースに行ってみよう。」
「わかりました。…あ。」
「やあ、未知。私は自宅の鍵など忘れていないよ、当然だが。」
「ええ、お父様。もちろん私もお父様がお忘れになった自宅の鍵なんて持っていません。」
「まあいい。とりあえず会議室を取った。あまり時間はないが、話はそこで聞こう。堤くん、頼む。」
「ええ、それではこちらへ。所長もどうぞ。」
「歩きながら失礼。お二人は娘の友人かな?」
「ええ、まあそんなところだと思っていただければ差し支えないです。」
「ほう。厳密な関係は友人ではない、ということか。」
「少なくとも俺は娘さんと友人になった覚えもないですし、当然恋人でもなければただの知人ってのもしっくり来ない。簡単に言うと、関係性を表す適切な表現が見つからない。」
「なるほど。面白い。そちらのお嬢さんは?」
「私は彼より明確に未知とは友人ですね。」
「それでは、お嬢さんと彼はどういう関係で表現する?」
「赤の他人。」
「はは。これは愉快だ。少年、表現は思いついたかい?」
「共謀者、ですかね。」
「ほう。何を謀る?」
「それが、何かを謀ろうとしてるのはわかるんだけど、それが何なのかは一向に教えてもらえない、っつー不思議な関係。」
「所長、みなさんこちらです。」