04. 塔は死神をもたらすか
「ですから、お嬢様がお見えです。」
「未知がここに…、そうか。わかった。アポイントメントもなく来られて相手ができるほど私はヒマではないことぐらいわかっていると思っていたけどな。お帰りいただきなさい。」
「わかりました。」
「堤くん。」
「はい。」
「娘は一人で来たのかい?」
「いえ。お連れの方が二名、計三名です。」
「ありがとう。」
「それでは…、…え?はい。なんですって。了解。…所長、申し上げづらいのですが、対応に出た所員を退け、お嬢様が無理矢理所内に入られたそうです。」
「ああ。わかった。では、打ち合わせ用の部屋を一つ確保しておいてもらえるかな。私がそちらにご案内するよ。」
「承知しました。」
「ちなみに娘はどうやって侵入した?ここはセキュリティは万全のはずだ。」
「所長の忘れ物、ご自宅の鍵をお忘れとのことで渡して欲しいと仰ったようですね。所員もそれで受け取るためにロックを解除して対応したようです。」
「子どもだましだな。こういうイレギュラーはいつもシステムではなく人間が起こすものだ。来客の対応マニュアルは見直すべきかもしれない。いや、私が娘にそんなことをさせてしまったことの方が対応急務か…。」
「差し出がましいようで恐縮ですが、お嬢様がここに来られた目的に心当たりはあるのですか?」
「いや、まったくないとは言えないが、これという決定打もない。正直なところピンと来ない。」