096 Epilogue of RF - 深水零の終幕
オレは何もできなかった。
このミッションにおいて、一番役に立たなかった。
サイコメトリがうまく行かなかった理由も、あの仏像の言う意味も、何もわからない。
オレは籠様のためにいるのだと、初めて会った時にそう思った。
オレの器、約定天鎖が敬うこの少女は普通ではない。
先ほど火傷の男に何かした結果、あの犯人と思しき男はおそらく一命を取り留めた。
すべてを無に。
前提や信念、すべてを一度捨てろ。
何を捨てればいいだろう。
捨てるべき前提や信念とは何だろう。
オレは選ばれし者ではなかったということか。
簡単にお気楽に楽しく好き勝手に。
そんな生き方が土台にあることが間違いだった、ということか。
薄っぺらい人生であることは否定しないが、不思議な少女と出会って生きる意味を与えられた気がしていたのに。
ユメカゴを一度離れよう。
籠様に報告して、オレは嘉稜寺を去った。
しかし、籠様はすべてをわかっていたかのようにいくつかの言葉をくれた。
貴方の求めるものはここにあります。
また、その時が来たら約定天鎖が導いてくれるでしょう。
貴方がいてくれて助かりました。
ありがとう。
やめてくれよ。
オレは役に立てなかった。
求めるものってなんだ?
一から出直そう。
オレはなんなんだ。
約定天鎖はそもそもなんなんだろう。
なぜオレを含むユメカゴは特殊な能力を使えるのか。
籠様は何のためにユメカゴを集めた?
ふと我に返ると色んな疑問が沸く。
まずはそこから解決していこう。
つまりオレは、生まれつき多少人より恵まれた身体能力や体格、センスがあっただけでそれ以上でもそれ以下でもない、というところから始めればいいのだと思う。
それ以外の性格や自信のような要素はいわばこのいい加減な生き方が生んだ虚構だ。
籠様は再会を示唆した。
まだ必要とされている。
であれば、その時までに今回のような惨めな思いをしないだけの変化・成長が必要だ。
もう一つ、約定天鎖について調べるべきだろう。
アテはないが、この器とやらについてもっと知らなければいけない。
ユメカゴから離れるとはいえ、現状まずは器についての情報を一番持っているであろう仲間たちに話を聞くところから始めるのが良いだろう。
その先のことはそれから考えることにしようと決めた。