Grim Saga Project

093 Episode NY 09 - 炎の混沌

 
 
 
初めて会った時以来の、二度目のご対面は長い石段の終盤に差し掛かった辺りだった。
背後から音もなく現れた妖精、籠様。
相変わらずすべてが人間離れしている。
急がないと間に合わないと言うから、俺は彼女の目を見て頷くだけで、すぐに後を追った。

円さんとも合流した後、迷わず駆け込んだ本堂で仏像に手を当てて目を瞑っているジャガーを見てわかった。
彼も器の声を聞いたのだろうと。
しかし、彼は声の主が仏像でないことには気付けなかったのだ。

俺にはわかった。
理由は簡単だ。
なぜなら、俺の左手には指輪が二つ。
俺の器ともう一つ、彼女から今回のミッションのために持たされていた指輪が、それぞれ薬指と小指に輝いている。
この二つの指輪は元々が対で創られたものらしいから、片方だけ装着している時と比べれば段違いの能力を発揮したものと思われる。

つまり、ジャガーの能力はサイコメトリだと聞いていたが、それは俺と同じ、器の能力に依るものなのだろう。
俺には声の主、仏像の中に眠る鉄の千年桜がハッキリ見えたのだ。

更にその後、籠様の導きによって燃え盛る倉庫に突入した。
これまで見たことのない壮絶な光景、最大危機状態の中で思いもよらぬ人物と対面した。
ペアの妹、真白。
思えば左手の対の指輪は彼女と行動を共にして入手したものだ。

結局恋人を救うためにグリムの器を追ってから遭遇したあらゆる人や物が、今日のこの瞬間、この場所に集約したような気分である。
対の指輪も、鉄の千年桜を救うために与えられたのかもしれないとすら思う。
しかし、再会に浸る間もない脱出劇が繰り広げられ、俺は盲目かつ衰弱した住職の肩を抱えて倉庫を後にした。