092 Episode RF 08 - 道化
聞こえない。
そんなバカな。
今までは呼ばれたら必ずハッキリ対話ができたのに。
オレは選ばれた者のはずなのに。
なぜだ。
なぜこの仏像からは声が聞こえない。
後から走ってきたアップルが脇目も振らずにすり抜けて行った。
オレも行くべきか。
いや、この問題を解決しなかったらオレは凡人じゃないか。
特に危機的状況でもアップルの能力なら対応可能だろう。
まずはこの仏像と対話ができない問題が優先だ。
このイレギュラーがなぜ起きているのか。
能力に異常が起きている可能性。
この仏像がこれまでのモノと何かが違う可能性。
または、呼び声の主がこの仏像ではなかったとか?
確かにこちらから聞こえたはずだ。
むしろ、目の前から未だ呼ばれている感覚はあるのに。
オレに何かの資格がない?
「貴方の視野は非常に狭い。」
「なんだと?」
「根本的な思い込みや信念をいくつも取り払わない限り、貴方は先に進めません。」
「どういう意味だ…!」
「すべて無に。」
「何を言ってる。何がわかる。」
「幸い、貴方の周囲にはもっとよくわかっている仲間が多数います。」
「ユメカゴのことか。」
「先に進みたいなら、貴方のその薄っぺらな自信や生き方を見直すことからはじめなさい。」
「…。」
くそ、なんなんだ、偉そうに。
やっと声を発しやがったと思ったらめちゃくちゃ癪に障りやがる。
しかし。
まったく否定もできないし、妙に痛いところをついていることは確かだ。
ジャガー、行きますよ、急いで。
声を掛けられて本気で驚いた。
オレの女神、麗しの籠様がすぐ後ろにいた。
仏様の次は神様か。
どうなってやがる、一体。