Grim Saga Project

091 Interlogue 05

 
 
 
石段を上る。
リリルが急かす。
待って。
そんなに急かされても。
小走りで上っているけど、これ以上は…。
石段の最後と同時に二人の人が見えた。

「ペア、急ごう、間に合わなくなる。」

驚くペアとナスくんを制して、そして急ぐように促して迷わず本堂へ。
向かう途中にいた見知らぬ女性はカメラマンだとペアが教えてくれたので、とにかく手伝ってくれとお願いをしてついてきてもらう。
本堂で今度は仏像に手を当てて会話をしているジャガーを見つけ、またとにかく強制連行だ。

腕の中でリリルが道を示す。
とにかく走ると、奥の部屋が真っ赤に見えた。
燃えている。
中で落ち着いている少年がキューちゃんだとわかる。

「キューちゃん、大丈夫、任せて。まずはペア、手伝って。」

お願いリリル、と小声で言うと、リリルが腕の中で熱くなる。
頭の中に近くの水道と井戸の場所が浮かぶ。
燃える部屋の左手にある崩れた壁のすぐ外側にある水道が一番近い。

「ペア、あの水道壊して。」

うわ、簡単にすごいこと言うね、という呟きの直後にペアが右手を後頭部に当てる。
左手が水道に向かって突き出されると、少ししてバシュッというすごい衝撃のあと、水が吹き出す。

「キューちゃん、火は全部は消せない。どうすればいい?」

手分けして怪我人を運び出しましょう、という指示。
さらにキューちゃんがジャガーに頼んで、倒れていた四人のうちの意識を取り戻していた女性の縄と猿轡を外す。
真白ちゃん。

彼女は大丈夫だと言う。
他の三人も自由にしてやる。
若い女性は大丈夫そうだが、住職と年配の女性は脱出に協力が必要だそうだ。
しかし一番重症なのはどう見ても倒れている男だった。
キューちゃんがジャガーに彼を運び出すよう頼む。
ジャガーが渋る。

「ジャガー、お願いします。」

私が一声掛けると、テキパキと倒れた男を肩に掛ける。
私も手伝うよ、と火傷の男を恐れずにカメラマンの女性が片側を支えた。
引き続きキューちゃんの指示に従い、ナスくんが住職に、真白ちゃんと倒れていた若い女性が年配の女性に肩を貸した。
キューちゃんはアップルさんと協力してオレンジさんを両脇から抱えて起き上がらせる。

この僅かな間にも火がどんどん燃え広がり、倉庫の一部は崩れ落ちた。
水道を破壊して水が吹き出した、部屋の左側の壁が外に直結しているのを利用してそこから順次脱出する。
住職に肩に貸していたナスくんがこちらを向いて何かを言う。
籠様、あの仏像の中に器があるぜ。

脱出経路を確保するために、ペアはフルパワーのサイコキネシスを発動させ続け、崩れ落ちる部屋からみんなを守っていた。
ジャガーとカメラマンの女性と火傷の男、ナスくんと住職、真白ちゃんと若い女性と年配の女性、キューちゃんとアップルさんとオレンジさん、最後にペアを脱出させる。

私はリリルと、燃え盛る部屋の中を本堂の入口側へと向かう。
ペアが引き止めたが、構わず炎の中に進んだ。