Grim Saga Project

087 Episode RA 11 - 能力と相性と

 
 
 
本堂へ。
ジャガーの聞いた声に従う。
消えた三人、空峰住職、編集長、アシスタントさん、そして後を追った二人、オレンジとキューちゃん。
計五人が居ない。
後からペアとナスくん、円カメラマンが来るはず。

本堂に誰かいるだろうか。
元々私とキューちゃん、ジャガーとオレンジが行動を共にしていたのは能力の相性を籠様が加味したからだと思う。
一番リスク回避に向かないキューちゃんの能力を補うのに相応しいのは、私かペアの能力のはずだ。

好ましくはないが、戦うような状況になった時に活きる能力、と言い換えることもできる。
オレンジとキューちゃんで行かせた判断は正しかっただろうか。
いや、それを言っても仕方がない。
もはや何らかの悪意が存在すること、それと向き合うことは不可避だと捉えているので、その場合は私がどうにかしなければ。
ジャガーの場合は基本的身体能力が高いが、能力は戦闘向きではないからだ。
いざとなれば、私一人でもいい。
ジャガーと行動しているのは、彼の身に危険が及ばないためだったが、彼よりも危険に晒されている可能性が高い五人をどうにかしないといけない。

ジャガーに続いて本堂に正面から駆け込んだ。
ジャガーはのろのろと正面の大きな仏像に向かって進んで行く。
声の出所を探して能力を使うつもりだろう。
私はそれを待たずに左奥の通路から裏側へ走る。
突き当たりで左右を見渡すと、更に左側に開け放たれた扉とその奥に人影が見えて駆け寄る。

「凛ちゃん!ダメ!」

奥からオレンジの叫び声。
扉手前で足を止めると中が見渡せた。

背を向けて立っている恰幅の良い男はおそらく編集長だろう。
こいつが悪意の発信源か。
どこから持ってきたのか、木刀を右手に構えている。
その奥にオレンジとキューちゃん、更に奥に人が何人も倒れている。

男が一瞬こっちを振り向いた。
その形相は鬼のようで、元々どんな顔立ちなのかわからないほど。
恐ろしい。
しかし、自分が大事な誰かを守れないことの方がもっと恐ろしい。
どうやってこの局面を乗り切るか、と考えた瞬間、男がこちらを振り向いた隙を狙って瞬が飛び掛かる。

すぐにあちらに向き直った男が木刀を振り上げた。

「いやあああああああ!!」

自分でも驚くような叫び声を上げる。
木刀が振り下ろされる瞬間、両掌を組んだオレンジがテレポートして男の背中側に現れ、思いっきり後頭部を殴った。
まるで野球のバッティングのような両手スイングが男の頭に直撃、男の身体がビクッと震え、木刀が右手から転げ落ちる。
突っ込んできたキューちゃんがそのまま男の正面から腰の辺りにタックルを食らわせ、しがみついた。

意外な二人の連携プレイに驚くと同時に歓喜したのも束の間、二人の最高の攻撃もやはり非力。
倒れもしなかった男が、まずしがみついた瞬を二度三度と殴り、振り払う。
直後にその後ろでへたり込んでいたオレンジの方に向き直ると、蹴り飛ばした。

私の中で何かが弾け飛んだ。