085 Episode MM 08 - 1+1が2より大きくなる
キューちゃんの透視能力の話を聞いているうちに気持ちが落ち着いていた。
理屈はわからないけれど、自分が夢中になっていることに気付く。
キューちゃんこと瞬の話はとてもわかりやすい。
まるで自分が透視能力を使えるような気持ちになった。
と、同時に今この力をどう利用したら消息不明の人々を見つけられるか、考える。
さっきまで極度の緊張と恐怖が自分を支配していたことを自覚していたが、嘘のようにリラックスモードになれた。
キューちゃんに感謝すると共に、透視能力の活用方法を考える。
もう一つ、私の能力の幅が増える可能性にワクワクした、というのはある。
私の能力は瞬間移動、テレポーテーションだ。
例えば仮に鍵を掛けられた部屋に三人が幽閉されていた場合。
キューちゃんと私の能力のコンビネーションは最高に役立つはずだ。
キューちゃんの透視で、鍵の掛かった扉を透視し、三人の居場所を特定した上で、私が扉の中にテレポートして中から鍵を開ければ良い。
母屋と長屋をざっと見た感じ、三人が閉じ込められているとは思えなかった。
風呂場?押入れ?いや、いなかったはずだ。
一人ひとりが個別に閉じ込められていたとしても、だとしたら誰か一人ぐらいは、その痕跡ぐらいは見つけられそうなものだ。
そう、キューちゃんと話した通り、まずは本堂を調べるべきだろう。
寺の造りはわからないけれど、母屋や長屋よりは人を閉じ込めておく場所はあるような気がする。
そこそこ広さもある。
キューちゃんと話してわかったが、透視能力を使うには相当集中力が必要なようだ。
私がテレポートするのも同じ。
似たようなものかと思えば、大体わかる気がした。
あそこもここも、と連発で使うわけにはいかない。
しかし、本堂を探索してすぐに明らかに怪しい部屋を見つけた。
倉庫である。
まさに想像した通り、鍵が掛かった部屋。
「キューちゃん、ここ…。」
「うん。透視してみる。オレンジさん、しばらく集中します。周囲に警戒してもらえますか?何かあったら僕の身体を叩いてください。声は聞こえないかもしれないので。」
「そんなに集中しなきゃダメなんだ。わかった。」
「それじゃこの扉の奥を見てみますね。」
キューちゃんが棒立ちになり、そして虚ろになる。
いや、集中しているのだろう。
彼の邪魔にならないように、彼のすぐ後ろに背中合わせで立つ。
きょろきょろと辺りを見回す。
さすがにこれだけ警戒していれば、何も起こりようがないだろう、と思っていたのが甘かった。
近くの柱の影から飛び出してきた何者かが棒のようなものを振りかざして襲ってきたのだ。
多少油断はしていたかもしれないけれど、彼と話してリラックスしていたのが功を奏した。
念のため、何かが起きたらどうしようか考えていたのだ。
振り向きざまキューちゃんに抱きつき、瞬間移動で鍵の掛かった扉の中にテレポートした。
直後にジャガーとアップルが自分たちを探す声が聞こえてきた。