084 Episode SM 12 - 能力の詳細
思った以上にオレンジさんが怯えている。
あまり良くない傾向だ。
何かが起きた時に通常を大きく下回る能力しか発揮できない。
そもそも僕は、残りのメンバーがどんな能力を持っているか知らない。
大丈夫ですよ、オレンジさん、と言いながら僕は恐怖の可能性を思いついた。
今敵対する何者かが特殊能力者である可能性である。
なんとなく僕は能力者は基本的にはユメカゴで仲間、という意識でいたけれど、それは非常に楽観的な誤りだろう。
「あ、そういえばキューちゃんさ、能力、透視なんよね。いなくなった人ら、それで探せないの?」
「ああ、そうか。詳しい話、してませんでしたね。できないことはないけど、きっと向かない。効率があまり良くはないですよ。」
「え、なんで?透視ってこうビャーっとなんでも透けて見えるわけじゃないの?」
「うーん、ビャーっと、とは少し違うかなあ。」
「じゃあどんな感じ?」
「そもそもオレンジさん、透視ってどんなイメージですか?」
「透かしたいものが透けて見えるんじゃないの?」
「そんな都合のいいものじゃないんですよ。普段見ている視界があるでしょう?そこから等距離の円状の範囲に、例えば1メートルなら1メートルの内側にあるものすべてが見えなくなります。」
「え?え?どういうこと?」
「僕とオレンジさんが今1メートル離れて立ってるとします。ここで透視を始めると徐々に近くのものから見えなくなっていく。で、1メートルの距離まで透視すると、オレンジさんの服が透けるとかではなくて、皮膚から内臓から、僕の両目から等距離にあるものが、地面ですら何も見えなくなる。」
「うわ、そういう感じなんだ。でも、うまく使えばやっぱりいなくなった人たちは探せるんじゃない?」
「集中してせいぜい数メートル程度までしか効果範囲が広げられないから、うまく使えば、ですね。」
「普通に探すよりきっといいよ。行こ、キューちゃん!」
狙いとは違ったが、透視能力について詳しく話したことがオレンジさんのリラックスに繋がったようだ。
気を引き締めて、歩き出したオレンジさんについて僕も一歩踏み出した。