077 Episode MM 07 - そして淑女は前に進む
直感。
うん、理屈じゃない感じ。
普段の自分らしくない判断。
でもなんとなく行かなきゃ、って気がした。
まだキューちゃんのこと、よく知らないけど初対面から信用しても大丈夫とは感じてた。
だから、冷静に考えたらアップルとジャガーのコンビの方が、何かあった時に解決できそうだし強そうだけど、それでも自分とキューちゃんで早く行かなきゃ、って。
急ごう、瞬。
石段を登り始めた時に、自分の口から出た言葉なのに、自分でなんだかドキッとした。
でもキューちゃんの神妙な頷きは、多分自分が感じたのと同じ、言い知れぬ予感みたいなものを感じているんじゃないか、って思うような、うーん、わかんないけど。
早足で石段を登る。
途中で一度立ち止まった。
なんだか急に不安になって。
「ねえ、あの、あのさ…。」
「うん。僕にもなんだかわかりません。」
「だよねだよねだよね。」
「うん。」
「どど、うしたら、いいいいのか、な。」
「とりあえず、落ち着いて、行きましょう。」
「ふう…。うん、わかった。行こう。」
多分そんな会話だった。
言葉に意味はなかった。
でも、不安を紛らわして、気を落ち着けるには、十分だった。
キューちゃんの初めて会った時の頼りない印象がウソのように、今は頼もしい。
石段を登りきり、嘉稜寺に辿り着く。
空峰住職も、間編集長も、アシスタントのさくらさんも、どこを探しても見つからなかった。