Grim Saga Project

076 Episode MH 13 - 虹見て思う私の色

 
 
 
連れて行ってください、結香のいるところへ。
彼女は即答した。
私も、はい、と迷わず返す。

お母様は体調が万全ではない。
病院も連れ出すことになる。
それでも構わないと、お母様が言った。

多少の気兼ねはあったものの、ここまで来た時点で心は決まっていた。
何かあってからでは遅い。
早速お母様の簡単な身支度だけ済ませて、私と時間差で病院を出た。

門の前で再び合流してゆっくりと歩き出す。
ところであの子はどこにいるのかしら、と尋ねられたので、軽く経緯も含めて居場所を伝えた。
そう、嘉稜寺にいるのね、それなら私も行き方はわかるわ、昔と変わっていなければ。

お母様の体調も考慮して、バスとタクシーで石段下まではほとんど歩かないルートを選んだ。
石段ではお母様の手を引くことにした。
ゆっくりと登る。

何組かの参拝客とすれ違う中、突然心臓がドクンと脈打つ。
視界に入ったのは、姉だった。
やはり来ていた。
更に見た顔が二人。
作務衣の二人は知らない。
もう一人面識のない女性がいた。

今はまだ知られたくない。
ごく短い言葉でお母様にそれを伝える。
幸い服装は変えてきた状態だ。
気付かれるだろうか。

姉に要注意だ。
私は石段の上側に背を向け、お母様の手を強めに引ける体制になった。
ドキドキしながら、姉の一団とすれ違う。

騒がしくない程度に会話をしながら、姉たちは通り過ぎた。
しかし、おそらく姉は気付いているのだ。
あの二人が一緒にいるということは、二人ともユメカゴだろうか。
おそらくそうだろう。
近いうちに籠様とも遭遇する気がする。
久しぶりだ。

ともかく今は、姉が気付いていようといまいと、やれることをやるしかない。
私は意識して元気に石段を登った。