070 Episode NY 07 - 舞台が整う
茶をすすりながら、間編集長は空峰住職にあれやこれやと相談を持ちかけていた。
自分としても後押ししたかったのは、泊まり込みによる撮影の申し入れである。
毎日数百段の階段を上り下りするなんて、考えただけで気が滅入る。
初めは機材を置かせてもらうだけのような話し方をしていたが、住職が何も拒まないのをいいことに、それならしばらく居させて欲しいとまで言い出した。
さすがに泊まり込みには拒否反応が出るかと思いきや、まったくそんなことはなく、いくつかの条件が提示されただけである。
基本的には、既に寺生活体験中の二人の若者、ジャガーとオレンジが承諾していたのと同じ条件だそうだ。
午前4時の起床、21時の就寝、一日一度の座禅と掃除、ただこれだけである。
これだけと言いつつ、どれも普段の生活からはかけ離れたものだが、間は階段の往復よりは楽だと判断したようだ。
撮影部隊の意向など無視して、迷わず寺での泊まり込み撮影を決めてしまった。
しかし、全員異は唱えず、快諾もしくは人によっては渋々承諾したものと思われる。
ざっと観察したところ、渋々承諾メンバーはいないのではないだろうか。
むしろ、モデルのラムとカメラマンの円などは快諾組でわくわくしているようにすら思えた。
この二人は特に、着替えとか大丈夫なんだろうか。
こういう時、真っ先に文句を言うのは女性だという先入観はいとも簡単に崩れた。
いいんだろうか…。
しかし、普段は一人のところをいきなり八人である。
住職が食糧の買い出しが必要だと仰る。
それはそうだろう。
「あ、じゃあわたし行きますよ!荷物持ちは尚都クンがしてくれるし。」
「私も行ってこようかな。」
ちょっと待て。
今なんつった?
一言も発することなく、階段の往復と荷物持ちが決定したような気がするぞ。
一緒に行くと行ったのは円である。
ああ、なるほど、この機にホテルに置いてきたのとは別に下着なども購入しておくつもりなのか、となんとなく感じた。
ああ、それは申し訳ないので私たちが行きますよ、とジャガーとオレンジも口を挟む。
間は行く気ゼロ、さくらさんはおとなしくお茶をすすっていた。
住職からはある程度の分量になるので、少し人数がいた方がいいとのことで、希望通り(?)のメンバーでの苦行となる。