066 Episode MM 06 - 淑女は三歩後ろへ
零から聞いた。
鉄の千年桜が行方不明であることを。
しかし、零は嘉稜寺を立ち去ろうとはしない。
なぜだろう。
「多分住職は嘘を吐いてない。」
「じゃあ尚更どうして?」
「おそらく大筋で嘘は吐いてないが、すべてを話しているわけではない、と思っているからだよ。」
「すべて…?」
「どう考えても器が行方不明になったことと、嘉稜寺事件は深く関係がある。だけど、ただでさえ失礼なことをたくさん聞いたんだ。いかに急いでるとはいえ、これ以上一気に畳み掛けるのは得策じゃない。」
「うん…。そうやね…。でもどうするん?」
「簡単だ。待つ。」
「何を?」
「時が来るのを。」
「なーに、カッコつけてんねん。時って何よぅ!」
「あはは。美愛らしい。でもちょっとは自分で考えろよ。」
「う。でも時がどうとか言われてもわからないし…。うーん。…うぅ、…ん?あ、ああ、そうか、わかった。」
「お。今はボケは要らないぞ。」
「ボケないもん!待つのは、…仲間。」
「ほう。大正解だ。ご褒美に今度メシ作ってやるよ。」
「うわぁ!って、…え、えぇ!?零、料理できんの!?」
「やりたいとは思わないが、できないと言った覚えはない。」
零と二人で入口の石段近くまで来た。
空峰住職の言っていたお客様御一行が、ちょうど到着したところのようだ。