065 Episode RF 05 - 捜査は一歩前へ
嘉稜寺に泊まり込み三日が経過した。
空峰住職は、慣れてくるとその挙動に違和感を覚えなくなってきた。
やはり盲目であるというのは本当なのだろう。
目が見えている人間の挙動とは多少異なる点が散見されるが、それでも生活にも坊としての日々にも不足はないように見える。
「なあ、住職。母屋の掃除をしてて気になったことがあるんですけど。」
「なんですか?」
「客間だか居間だかの少し広い部屋に神棚がある。あれ、何も祀られてないけど、なんかあったんじゃないかと思える。」
「ああ、ありましたよ。御神体が。だけど、昔行方不明になってしまいました。」
「行方不明?その何かは生き物だったってこと?」
「いえ。さすがに神棚に生体は祀っていなかったつもりですが、…しかし、あながちあり得ない話ではないのかな。忽然と姿を消してしまったんですよ。」
「と言っても、歩いて出てくのを見たわけじゃないんだよな。」
「少なくとも当時私はまだ目が見えましたが、そんな姿は見てませんね。」
「すごく失礼かもしれないけど、それって俗にいう嘉稜寺事件と関係が?」
「へえ。よくご存知ですね。あまり思い出したくない話だけれど。そもそも深水さんと光井さんは、それを知りたくてここへ?」
「いや、そうじゃない。仰る通り興味はあったから事前に少し調べては来たけど、詳しくはどこにも書いてないし、殺人事件を蒸し返すつもりはさすがにない。」
「ということは、御神体か。」
「事件よりはそっちに興味はありますよ。」
「残念ながら、今の話ですべて。事件の時に行方不明になった、ということ以外何もわかりません。」
「そうか…。不躾なことを聞いて申し訳ない。答えてくれてありがとうございました。」
「いえ、ところで深水さん。今日はもうそろそろ来客がある予定なのです。すみませんが、光井さんとお出迎えをお願いできますか?」