062 Episode MH 11 - 花は近づく
とっておきはまだ結香に話していない器の特性を利用することだ。
可能かどうかはやってみなくてはわからない。
それは、私かもしくは結香が、器と対話すること。
今回初めてここまで器に接近することができたけれど、私が器に選ばれるとまでは思えない。
器は選んだ対象にのみ語りかける、という話を聞いたことがあって、その信憑性は不明だから、半分賭けのようなとっておきだ。
そして、結香にそれを伝えたのは、結香を私の協力者にして、自分が器を使えなくても、器の力の真相に迫れる可能性を考えてのことだ。
「でも一つ問題があるよ。」
「なに?」
「これを話すのは、ある意味貴女を信用してのことだと思って欲しいんだけど。実は今、呪いの枝はその行方が誰にもわからないの。」
「え?だって、結香、器を狙ってる何者かから守りたいんじゃ…。」
「どこにあるかわかっていたら、そんな回りくどい妨害をしなくても済むと思わない?」
「…あ。」
「うん。だから、手紙の警告を受けて、何者かが呪いの枝を持ち出すことを妨害するけれど、一方でその何者かが呪いの枝のありかを知っているのであれば私もそれを知りたいの。」
「なるほど。でも嘉稜寺にはあるのよね?その何者かは嘉稜寺に来るんでしょう?」
「来ることは来るみたいだけど、確証はないの。」
「行方不明になったのはどういう経緯?」
「さっき話した、人が亡くなった事件が起きた時にその騒ぎの中でなくなったそうよ。」
「詳しく聞いてもいい?」
「生まれる前だから、私が知ってることにも限りがあるけど。」