059 Episode MH 08 - 情報の塩梅
「グリム…?知らない。」
「そう。それじゃあ、その呪いの枝の別名が何と呼ばれているかは?」
「鉄の千年桜。」
「うん。そう。まず、鉄の千年桜に関する何かが起きようとしていることは間違いないみたいね。」
「うん。」
「その鉄の千年桜は、グリムの器と呼ばれているものなの。他にもたくさんあるみたい。いくつかは現存しているとされているし、様々な噂も逸話もある。古くは歴史的な事件にも多く関わっているとさえ言われている。」
「そうなんだ…。」
「そもそもなぜグリムの器と呼ばれているかというと、グリムという名の一族が作ったものだとされているから。そして、器は一つ一つ形も違うし、秘められた力も異なるとされているの。」
「秘められた力。」
「その力には共通点があって、記憶を司るということらしい。」
「記憶を司る。私の知ってる呪いの枝の話とは違う。」
「結香は呪いの枝の何を知っているの?」
「そうだね。話があまりに食い違うとおかしいから、私も少し話しておくよ。鉄の千年桜を巡って昔人死にがあったのよ。」
「え?誰かが亡くなっている…?」
「一番最近は、私の知る限り、私の母親。」
「結香って小さい頃お母様を亡くしているんだっけ?」
「ええ。私の母は病死だけど、その前に亡くなった二人は殺されている。」
「それぞれいつの話?」
「私の母が亡くなったのは、私が生まれてからわりとすぐだから、大体20年前。殺人事件はその約5年前、今から25年前に起きたはず。」
「この20年の間は呪いは起きていないのね?」
「知る限りは。」
「それじゃあ、呪いと無関係にあなたの周りで亡くなった方は?」
「そりゃたくさんあると思うけど、印象的なもの、特に近しい人や変わったものは思いつかないよ。」
「ふうん…。」
「ねえ、何なの、グリムの一族とか秘められた力とか、スピリチュアルみたいでなんか気持ち悪いんだけど。」
「そうだけど、真実は時にそんなに見えている世界にとどまらないのかもしれない。私だってグリムの一族とか言われても意味わかんない。」
「ほら、約束通りその辺りから詳しく先に話してね。」