058 Episode MH 07 - 桃源郷に舞う
結香はグリムの器に近づくための重要な鍵となる。
選ばれなかった者である私にもそれはわかる。
ユメカゴが向かっているという情報もキャッチしている。
籠様や姉でないことを祈るのみだ。
ユメカゴの誰なのかまではわからない。
樹齢約900年の桜の木があるそうだ。
その桜を管理している嘉稜寺の住職の娘が結香である。
そして、結香は訳ありの何かに、まさに首を突っ込む直前だ。
全部話せと言われて、私はどこまで話すべきか迷った。
とにかく向かった先は結香の住むアパートだった。
美大に通う結香は生家を離れ、アパートに下宿していた。
「私が長年に渡って探していたものが、どうやらあなたの家にあるらしいの。」
「私の、家…。あなた、まさか、…呪いの枝を狙ってるの?」
「呪いの枝?私の知ってる話ではそんな名前じゃなかった。」
「ああ、ええ、そうね。でもどうして?それが特別なものであることは、私の一族しか知らないはず。」
「ううん。そうじゃない。そして、その呪いの枝と呼ばれているものはシリーズなの。一つではない。」
「あんなものが他にもあるっていうの!?」
「ええ。ところで結香、呪いの枝が何かってことについて、どこまで知ってるの?」
「わからない。私の知っていることは、どうもあなたの知っていることと少し違うみたいだし。」
「それじゃあ、約束通り私の知っていることから話をする。その代わりお願い、とても大事なことなの。結香の知ってることもちゃんと教えて。」
「約束できないよ。あなたの目的次第では、私はあなたに情報を渡せないもの。」
「わかった。それじゃあまずは、私は私の知る限りを話す。目的も話す。それで結香と立場を分かつならその時に相談しよう。」
「考える。」
「うん。まず、結香はグリムという名は知っている?」