057 Episode MH 06 - 桜娘は花咲きて
これまで様々な運や巡り合わせが、私を核から遠ざけているように感じていた。
まるで不釣り合いだと、知るだけの資格がないと、烙印を押されているような。
しかし、今回ばかりは勝手が違う。
今の私には追い風が吹いている。
結香に連絡したのは、偶然という名の必然だったのかもしれない。
自分の立場を偽るために彼女の立場を参考にしようと思っていた。
しかし、気がついたのだ。
彼女の姓が"空峰"であることに。
「バイトってなあに?」
「アシスタント。」
「何の?」
「雑誌の取材と編集。」
「それ別にあなたのやりたいことじゃないよね?」
「…ちょっと訳あって、このバイトはやらなきゃいけないの。」
「その訳は聞かせてもらえるの?」
「あんまり話したくないな。」
「そうだね。バイトの話になってから口が重いもの。」
「口調が普段のままに戻ってる。」
「あら。じゃなくて、あれ?失敗失敗!」
「変なの。」
「うん。ちょっと変なんだ、元々色々。」
「モトモトイロイロ。」
「あれ?また変?」
「ううん。でも、押し掛けてきたあなたから話すのが筋ってものじゃない?」
「うーん。そうか。どこから話したものやら。」
「全部。」
「全部!?明日になっちゃうよ。」
「バイトが始まるまでまだ日にちあるし、私は大丈夫だけど。というか、それを聞かずに私だけ話す、ってのはないなー。」
「むむむ。」