Grim Saga Project

053 Episode RA 08 - 一縷

 
 
 
近隣を調べると、宿から歩いてすぐのところに市立図書館があったので、そちらを先に回ることにした。
嘉稜寺に泊まり込んでいるジャガーとオレンジも、どこかには宿を借りていると思うけれど、場所はまったく聞いていない。
今は嘉稜寺にいるのだろうけど。
学校とか日常の都合を調整するのに、私は数日掛かったので瞬には待ってもらった。
すぐに動けたジャガーとオレンジの方が先行していたのはそういう理由だ。
 
市立図書館で人の良さそうな司書と話をする。
50代だろうか。
若々しい女性で、手際も良い。
図書館を利用するのに必要だというカードを作ってもらいながら、話を聞いた。
大学のレポートを書くために、という名目で嘉稜寺と千年桜について調べている、と伝えると気になる話を一つ教えてもらえた。
 
「たしかあれは私があなたたちぐらいの頃ね。25年?30年?うーん、もうちょっと前かしら。あのお寺で殺人事件が起きたの。詳しくは新聞を読んで。私もわからないし。亡くなった方は一人じゃなかった。二人か三人はいたはず。一番印象に残っているのは、犯人が見つからなかったことかな。当時怖くてみんな怯えていたの。結局どうなったのかなあ。犯人が捕まったという話は聞いた覚えがないけど、捕まってるといいわね。あなたたちのレポートにまったく関係ないかもね。ごめんなさいね。」
 
「いえ。とても興味があります。ありがとうございます。亡くなった方は、えーっと一人ではないとのことでしたけど、どんな方々だったのですか?」
 
「うーん、経緯は覚えていないけれど、確か当時とても力のあった会社の偉い人とかだったかな。あ、そうそう、なんか当時この街を開発して大きくしようとしてた、って話じゃなかったかしら。そんなことになっちゃったから、結局そうはならなかったんだと思う。」
 
とても重要な話に思えたので、私と瞬はその事件に関する記事を掲載した新聞を探した。
そして、発見した。