052 Episode RA 07 - 合理
少し打ち解けてくると、キューちゃんこと緑川瞬がとても頭の良い人間だとわかる。
まず、救うべきターゲットである鉄の千年桜が何かを知るための筋道を立てる時、比較的合理的に物事を考えて行動計画を作ろうとする。
それに対して、人間関係・コミュニケーションのスキルは成熟度が不足しているように感じられるけれど、私の見立てでは単なる経験不足。
そもそもできないわけではないことは、私とのコミュニケーションで十分にわかる。
少し彼に興味が出て来た。
様々な基礎スキルは多方面で高いはずなのだけれど、自己評価が低いのはなぜなのだろう。
すぐに思いつく可能性として、一つは有能な人間が身近にいたことで自分と対比して自己評価を下げてしまっていること、もう一つは自らの大きな失敗によってできないんだと思い込んでいる線。
ほかにも考えればある。
彼の親が、子に対して否定的に接することで自信を形成できずに年齢的な成長を重ねてきた可能性とか。
私と瞬は、先行部隊の二人に続いて奈良入りしていた。
「凛、ジャガーとオレンジはどういうアプローチを取っているの?」
「うん、二人は千年桜と呼ばれる桜を管理している嘉稜寺というお寺に興味があって体験・修行をさせてもらう体で泊まり込みをさせてもらうことができたみたい。数日前に"心頭滅却してくる!"って連絡あったよ。」
「へえ、それは凄いね。一番近道かもしれない。それ以外のやり方は何があるだろう。」
「うーん、そうだなあ。ジャガーはきっと嘉稜寺と千年桜の歴史とか調べて行ってるだろうし、それでも近代的な歴史についてはまだかも。観光案内所とか図書館に行ってみようか。」
「ああ、なるほど。話を聞く方法と、新聞だね。」
「うん。瞬、すごく頭いいよね。」
「え、そんなことないと思うけど。」
「図書館ってキーワード新聞を探ることを見抜かれるとは思わなかった。」
「そういうもの?」
「そういうもの。どうしてそんなに自分に自信がないの?勿体無い。」
「うーん、どうして、って言われても性格じゃないかなあ。」
「違うと思うな。」
「ところで凛、観光案内所と図書館は二人でそれぞれ別に当たってみる?」
「ううん。順番に一緒に行こうよ。」
「そう?了解。」