030 Episode MH 04 - 混ざらぬ白
やはりその有力な情報の出所は、例の情報屋であった。
傀儡のような細く折れ曲がった体躯が、目立つ鷲鼻を一層奇妙に引き立てる。
一般的な感覚で見たら気持ちが悪く、薄気味も悪いおっさんだ。
だが、そこから入手する情報の信憑性の高さが、他の情報屋のそれとはケタ違いなのである。
容姿の不気味さなど無視して繋がっていたい貴重なルートだと認めざるを得ない。
ただ一点気をつけなければならないのは、この男が籠のお嬢様と繋がっている可能性。
グリムの情報を追い求めて出会った経緯のはずなのに、籠のお嬢様にどうしても結びついてしまう。
私の直感が、グリムの器と籠のお嬢様に何らかの関係があるはずだという仮定の現実味を高めに予測しているのは、この男の存在が大きい。
出くわす可能性のある見知った顔が、籠のお嬢様なのであれば退散せざるを得ない。
私は色々な可能性を考えながら西の地に降り立った。
半年も寝かせて、熟成させた情報だ。
今回こそは、という気持ちが強くあることが自覚できる。
その表れの一つは私の身なりだ。
ここまでは気に入った服を着て、小綺麗にして動き、振る舞ってきたが、今回は設定を作った。
普段絶対着ないオーバーオールに汚れたシャツ。
画家の卵を演じるのだ。
理由がある。
今回の件への思い入れはとても強いが、極端に言えば運命のような、とすら表現しても良いような繋がりがあった。
一人の友人がこの話に関わっている。
その友人は美大に通っていた。
だから、本当は高校時代の友人なのだが、その友人の美大に自分も通っている設定にするのだ。
絵は苦手で、まったく描けないのだけれど。
普段まったく使わないリュック?デイパック?とかいう種類のバッグに荷物を詰め込むことにさえ手間取った。
その友人には連絡をしてあるけれど、詳しい話はしていない。
どうも彼女も複雑な状態にあるようだ。
まずは、彼女の話を聞きに行こうと思う。