023 Episode SM 03 - 緑と籠の縁
正直、"カゴノオジョウサマ"というキーワードが何だったのかよくわからない。
だけど、確かにその言葉を伝えて取り次いでもらった人が、今の自分のいる環境から一歩外に連れ出してくれる人だということは理解できた。
名も知らぬ情報屋の美しい女性には言わなかったことがある。
自分の特殊な能力のことだ。
"神の器の毒"という言葉は、姉とその恋人の病気の本質に繋がっているのだろうか。
その話と僕の能力はまったく無関係だと思っていた。
だから特に話す必要性も感じなかったし、そもそも会話に必死で思いつかなかった。
情報屋とはまた違う美しい女性と出会った。
「あなたがカゴノオジョウサマですか?」
「いいえ。でも、私はあなたの呼び掛けに応じて来たことに間違いないわ。大丈夫。」
何が大丈夫なのかよくわからなかったが、おそらく情報屋の女性の目論見が正しく動いたということなのだと理解した。
情報屋と目の前の女性に、不思議な近似を感じて、一瞬何が何だかわからなくなった。
そう。
そもそも、次に情報屋とより良い形で会うため、という漠然とした希望は、きっと情報を得ることなのだと思っていた。
けれど、そのために何をすべきかはさっぱりわからない。
特別隠すようなことは何もない。
そう思って、微笑をたたえて向かいに座っている美しい女性に、自分が知りたいことを伝えるための言葉を紡ぎ始めた。