Grim Saga Project

021 Episode SM 01 - 緑の血縁

 
 
 
僕は打ちのめされた。
あの明るくて元気な姉が病気になった。
医者は、罹患した可能性が疑われる、という程度の希少な難病について話したが、頭には入ってこなかった。
父も母も早くに他界しているため、姉にとってはこの僕、弟の緑川瞬が唯一の家族なのである。
 
元々無気力だった。
幼い頃に両親をなくし、引き取られた祖父母の家はお世辞にも良い環境とは言えなかったのだろう。
虐待というほどの何かがあったわけではないが、祖父母は迷惑極まりないという心情を隠そうとはしなかった。
姉はそれでも明るく振る舞っていたが、僕は自分が世の中にいないものとした方が楽だと考えていた。
 
それでもかろうじて生きてきた。
拠り所だったのだ、姉の存在が。
その姉が倒れた。
 
難病と言われてもどうにもよくわからない。
奇妙なのは、直前まで姉の恋人が同じような病気で入院していたが、突然全快したこと。
風邪のような話ではないとわかっているが、感染という言葉が頭に浮かぶのは仕方がないと思えた。
姉に聞いても偶然と言われたし、医者に聞いても相関性があることはあり得ないと返された。
しかし、姉が病気になった原因もわからないらしいし、姉の恋人が治った理由もわからないようだ。
結局何もわからないんじゃないか。
相関性がないと言う理由すらないはずなのに、まったく理解できない。
ただ常識に縛られているだけ、というのが率直な気持ちだ。
 
医学などまったくわからないし、普通の勉強すら並以下の自分だけれど、今回の出来事についてはどうしても納得がいかない。
はっきり言って、まったくガラじゃないけれど、自分で調べてみようと思った。
どうせ大学も休みがちだし、ロクにバイトもしていないから、時間はたっぷりある。