Grim Saga Project

018 Episode RF 04 - おごそかな実行

 
 
 
とりあえず、嘉稜寺を散策する。
もちろん参拝も。
本堂には入山料とは別に参拝料と書かれた木箱がまた置いてあった。
今度はコインを3枚。
もう3枚はないな、と思ったら美愛が3枚コインを入れた。
 
こじんまり感はあるけれど、門をくぐってすぐに視界に飛び込んできた景観がそう感じさせただけだったのかもしれない。
敷地は印象よりも広い。
敷き詰められた砂利の中に数本の舗装された石畳が道を成している。
山の中、森の中、自然との共存というワードが脳を走る。
 
母屋も一応見に行ったけれど、言葉とは裏腹に大きな建物だった。
母屋と長屋、二つの建造物が居住空間になっているらしい。
あとで先ほどの住職に、これだけの広さの住まいや敷地にどのぐらいの人数がいるのかを聞いてみたい。
 
「あれあれ。そこが先ほど申し上げた、見ても何もない母屋ですよ。」
 
突然近い背後から声がして驚いた。
オレより美愛の方が驚いたらしく、彼女の身体が背中の左側にトンとぶつかるのを感じた。
ひっ、という小さな悲鳴のような声と共に。
 
「ああ、驚かせてしまった。すみません。目に頼らなくなってから、音に頼るようになったもんで、自分から無駄な音を出さないように動く習慣が身についておりまして。」
 
「いえ。こちらこそ、母屋も興味があって勝手に近付いてしまいました。本堂はとても素晴らしかった。心が洗われるようです。」
 
「それは良かった。ちょくちょく人は来るものの近所の人間だとこういう気ままなスタイルだとわかってるものでね。そういう言葉を聞くのは新鮮です。」
 
「はあ。そういうものですか。ところで、パッと入ってきた時の印象よりだいぶ敷地が広いように感じました。住職とあと何人ぐらいでここを管理されているんですか?」
 
「いやいや、私一人で細々とやっておりますよ。」
 
「え!?しかし、住職、目が…。」
 
「そうですね。経を読みに下山する時は不便ですが、日々の暮らしは慣れてしまえばどうにかなるものです。これでも毎日ぼちぼち掃除もしとります。」
 
「そうでしたか。うーん。住職、ちょっと相談があるのですが…。」