017 Episode MM 04 - しとやかな決意
心なしか声が小さい自分を自覚していた。
目が不自由だから音には敏感なんじゃないか、という先入観が働いたかもしれない。
「ちょっとちょっと、零!」
「んー?どしたー?」
「なんでそんなのんべんだらりなん!?あの紳士風の坊さん、なんか気味悪くなかった?」
「そうかな?どこがだろう。目が不自由な人にオレたちが慣れていないだけなんじゃない?」
「ぅ、うーん、そう言われるとそうかも…。」
確かに、自分たちのすぐ横を通り抜けたのも、会話の間も、立ち位置の距離感も、すべて目のせいとも言える。
それでも得体の知れない気持ち悪さのようなものは消えなかった。
「ねえ、ホントにここに居座るの…?」
「それが一番近道だという仮説は変わらないかな。気持ち悪く感じるのもわからないではないけど。」
「うーん…。」
「どうしてもイヤなら何か他の方法考えてみる?」
「うーん…。ない、よなぁ…。」
「まあ、地道な感じなら出来ないこともないけど時間は掛かるだろうな。」
「今日はやめとかない?晩ご飯作るから!」
「うわ、なんだそれ。オレが美愛に夕飯作って欲しい前提みたいなのなんかおかしくない!?」
「うん。自分で言ってから失敗したと思ったよ…。」
「なにしおらしくなってんだよ、美愛らしくもない。」
「だって…。」
柄にもなくもじもじしている自分が気持ち悪い。
あの坊さんといい勝負かもしれない。
わかっているのだ、現時点での最善策が何か。