010 Episode NY 05 - 門前の助手
嘉稜寺。
今回の撮影場所だ。
近くに宿を取っているが、最短かつ最困難なルートを移動した結果、正直何度もここを往復するのはツライということがわかった。
俺はまだいい方で、特に大変なのはカメラマンの円だろう。
なんせ機材が多い。
そういえば遠回りでも車で石段前まで来れるルートもあると聞いた。
が、そんなに頻繁にタクシーを利用できるほどの予算があるとも思えない。
宿はとりあえず二週間取ったと聞いてはいたが、半月も撮影に掛かるものなのか、という印象だ。
とにかく、例えばこの獣道を二週間毎日通う、なんてことになったらどうしよう、面倒だな、という単純な想像から思考が動いていることは自覚できた。
とりあえずその大変さを一度体感しつつ、事前に電話で撮影許可を得てはあるらしいが、直接住職とも話しておきつつ、可能であれば撮影も試してみよう、というのが今日の目的であった。
なんというか、ぶっちゃけ行き当たりばったりだな、と感じてもいたが、あまり綿密な計画も立てられなかったり、立ててもその通りにならないような業種なのかもしれない。
ようやく石段には辿り着いたが、予想以上にその道のりは長そうだ。
境内が遥か先、とても高いところに見える。
余計に憂鬱になりながら、俺は一歩を踏み出した。
獣道の参道と同じ順番で人が動いていたのは、きっと個人の性格や荷物の重さなどの理由を合わせると結局それが自然なのだろうと思う。
だが、俺とさくらさんの最後尾がここでは食い下がり、円さんの荷物のごく一部を運ばせてもらうことになる。
すでにラムの姿はだいぶ先。
あの細身なのにどこからこんな元気が溢れているのか不思議になる。
今度は誰も声を発しなかった。
ラムに呼ばれることもなかった、という意味だ。
やはり疲れもあったのか、石段を登るという苦行の最中にはそんな気になれなかったのか。
結局宿を出発してから約1時間半ほど掛けて、ようやく目的地の入口に辿り着いた。