007 Episode NY 02 - 和洋美マリアージュ
さて、この奇妙なパーティの目的は何かというと。
カメラマンにモデル、雑誌の編集長とアルバイトのアシスタントが揃っているのだから答えは簡単、撮影である。
雑誌「シェリー」の特集で、和と洋のマリアージュを表現することになったらしい。
芸術はどうもよくわからない。
俺自身はシェリーという雑誌を見たことも聞いたこともないので、どんな雑誌かもわからない。
それは素晴らしいテーマなのだろうか。
なんせ、和を示す場と洋を示す人で風景と人物の美しさを相互に際立たせる写真を撮るのが目的だと聞いた。
やはりちょっと言っていることがよくわからなかった。
そう、俺以外のメンバーは役割が明確だ。
当の俺自身、与えられた役目が何なのかわかっていない。
表向き、というか、肩書きの上ではモデル・ラムの助手だそうだ。
助手って何をすればいいんですか?
とラムに聞いたら、まずはその敬語をやめることよ、と返された。
それ以前にラムさんと呼び始めていたのに、「さん付け」をやめることに抵抗があり、相当な力が必要だったというのに。
もしかしたら、彼女にいいように弄ばれているのではないかと思ったことがないわけではないが、そんなことをして何になるのかがわからない。
とにかく、この撮影に帯同している現在でも周囲に違和感を抱かせずにラムを呼び捨てにし、タメ語で話すことに少し自信がない。
ん?というか、やっぱり助手の仕事ってそもそもそんなことじゃないような気がする。
まあ、そんなわけで一向は”和の場”に向かっている。
目的地は奈良県U市の嘉稜寺という寺だった。
確かに和ではある。
そしてラムは日本人だけれど、そこには洋的美しさを備えているというのも感覚的にはわかる。
お、ということは俺にも少しは芸術が理解できる、ということだろうか。
「ナオトー!ちょっとちょっと!」
何芸術がわかるとか言っちゃってんの!?とか突っ込まれたかと思うぐらいグッドタイミングで、先頭を行くラムから声が掛かった。
先頭から最後尾まで美しく響く声に対抗して、というか、ちゃんと先頭まで聞こえるように”はいはーい”と声を張ったが、思ったよりも大声を出すのに体力を要した。
山歩きとは聞いていたけれど、山登りとは聞いていなかったので、突然のハイキングで疲れていたのかもしれない。