Grim Saga Project

004 Linking [PACEW] Anti Poison Unit

 
 
 
「へえ。ユメカゴの話かと思ったら真白も一緒なんて珍しいわね。」
 
「共同戦線ということで。」
 
「あら、私は仲良くなったつもりはないわよ。」
 
「まあまあ、そんなこと言わずに。彼女も知りたいことがあるようだし。」
 
「ふうん。どうしたものかなあ。」
 
「ペア、早速だけど器の毒に…、ってあれ?そもそもペアってどこまで知ってるんでしたっけ。なんか突然違和感を覚えた。」
 
「瞬は勘がいいからね。尚都はどこまで知ってると思う?」
 
「あ、これはダメだ。既に手の平の上にいる。」
 
「そんなことないって。真白も凛も、聞きたいことがあるんでしょう?」
 
「じゃあ、私から。毒とは関係ないかもしれないけど。器の力を発動させるための条件、またはそういう要素って見分けられるの?」
 
「千年桜を貴女に渡したのは、籠様の意思だからね。私にはわからないよ。」
 
「籠様には何か見えるのかな。」
 
「うーん、本人の感じだとわからないんじゃないかな。ほら、あの子って神秘的じゃない、どことなく。ミッションとかについても独断じゃなくて何かの声を聞いて判断してるみたいよ。それも器なのかも。」
 
「そうか。籠様も器を、…ってあれがそうか。いつも持ってるやつ。」
 
「あのもこもこ抱き枕?あれが器…。あ、でも、嘉陵寺ではなんか色々そうじゃなくなったりしてたっけ。色んな事があり過ぎて不思議な事、で片付けてたかも。」
 
「普段はペンダント。」
 
「そうなんだ。」
 
「お姉ちゃん、じゃなくて、えーっと、いいやもう。結局籠様って何なの?あの子が来てから、色々おかしなことになってる。彼女は何がしたくて、何のためにユメカゴを率いているのかしら。」
 
「あら、真白、随分観念したのね。」
 
「お姉ちゃんに隠し事しても無駄なんだもん。結局私はそれを知るために器のことを調べてるわけだし。」
 
「たしかに籠様の目的もそうだし、そもそも存在が謎だよな。人間なのかどうかすら怪しい。」
 
「さすがにそれは私にもわからない。でも協力しているのはたしかね。」
 
「なんで協力してるの?」
 
「うーん、抽象的な答えになるけれど、大事なものを守るため、かな。」
 
「その大事なものが何か、を聞くのは野暮ってことですね。」
 
「大事なもの、かあ。でも少なくともペアにも理由があったんだね。」
 
「それはもちろんそうよ。ミッションなんかはその時々でどう私の目的や理由に繋がるのかわかりづらいことは多々あるけれど、少なくとも私は納得して協力してる。」
 
「そういう話なら、私もう一つ聞きたいんだけど、そもそもユメカゴってどういう理由で結成していて、みんなはどういう理由で協力しているの?」
 
「一貫してるのかどうかは知らないけど、俺は籠様とペアに協力して欲しい、って頼まれた。それに同意した形だ。だけど、先日の嘉陵寺の事件を受けて、器の核心に迫るなら、もっと言えば梨紗を治すためなら、ユメカゴにいるべきだと判断はしてる。」
 
「僕も似たようなものかな。ユメカゴへの道は真白さんに繋いでもらったようなものかもしれないけど、元々は姉を病気から、いや、器の毒から救う方法を探して辿り着いた。ここには器の情報がたくさんある。」
 
「瞬と杠さんは目的が同じだもんね。そしたら、私は今はもちろん梨紗さんの快復、または解毒に全面的に協力するつもりだけど、元々は違った。ペア、話してもいいの?」
 
「ええ。特に何も隠してはいないわ。真白にもここまでは言わずに来たけど、そろそろ潮時だし、もうある程度掴んでいるようだしね。」
 
「私は能力者だから、という理由で協力したの。あの、嘉陵寺でのこと、ここにいるみんなは知っていると思うけど、…まだ完全に気持ちの整理はついてない。私は生まれつき炎を操る力を持ってた。感情の起伏に応じて強弱の異なる炎が具現化できる。指輪とかと少し違って、コントロールはある程度可能。あとは私自身の気持ちのコントロールの問題だけ。」
 
「ということは、凛さんの力はそもそも器の力ではない、ということなのね。」
 
「ええ、そう。今の世にある人間の常識から外れた能力の多くにはグリムの器が関係していると思うけど、凛のはおそらく違う。」
 
「そうだったんですか。大丈夫。凛の気持ちがコントロールできれば炎もコントロールできるとわかっているのなら、問題はないです。でも、一つ気になるのは、僕の力はどっちなんだろう、ということですね。」
 
「尚都、梨紗から聞いている?私と梨紗は元々友人なの。」
 
「は?おいおい、ちょっと待て。なんだその話は。初耳だぞ…。いや、まあそれはいい。それが瞬の能力とどう関係がある?」
 
「私が梨紗のことを元々知っている前提で話すから、今のはただの前置き。だから、瞬のことも少し前から知ってはいた。大人になってから会ったのは、ユメカゴに入る時が初めてだけどね。で、わからないけど、梨紗と瞬は器の影響を受けやすい血筋なんじゃないかとは思ってる。瞬、その能力って後天性でしょう?」
 
「あ、はい。そうですね。気付いたのは中学生頃だったとは思いますが、少なくともそれより幼い頃は使えなかった、もしくは使えたとしてもそれは知りませんでした。」
 
「器の毒、といってもプラスに影響すれば能力だし、マイナスに作用すれば病気や体調不良になるとしたらどうかしら。」
 
「僕の能力も器の影響かもしれないってことか…。」
 
「梨紗や尚都の病気は明らかに器の影響だよね。でも、尚都の病気は快復して、能力を使えるようになった。これは器の影響の仕方が変わった、とすると。」
 
「器の影響が変化する可能性があるってことだな。」
 
「どれも推測に過ぎないから、確証に変えたいとは思ってる。それもユメカゴの課題の一つね。私の大事なものの一つはユメカゴのメンバーだし、真白でもあるし、梨紗でもある。それを守るための力の一つはユメカゴ。」
 
「なんか難しいな。」
 
「私を突っぱねてたのは私を守るためだったって言うの?」
 
「ええ、私にはわからないのだけれど、おそらく貴女には器を使うことができない。だから近くに居すぎるのは危険だと思ってたわ。だからって飛び出されたら心配するから困るんだけど。」
 
「どうして話してくれなかったの…?」
 
「話しても納得しないでしょ、貴女は。今は色々目の当たりにしたから、また違うとは思うけど、それでも今貴女は、私にも扱える器があるんじゃないか、って思ってるはずだし。」
 
「う、…。」
 
「とにかく、だ。器の人間への影響については、もう一つ共有しておこうと思う。梨紗を治す方法として籠様から収集した情報だからもうペアは知ってるかもしれないけどさ、可能性の一つとして、器から受けた異常を正常に戻すには、その器に信頼されるか、諦めさせればいい、だそうだ。」
 
「なるほど。たしかに、器と高度な信頼関係を築けると会話すらできる、と聞いたことがあるわ。」
 
「つまり、器には意思がある。もしかすると、生きているのかもしれない…?」
 
「器が生きている、か…。どうなんだろう。あり得るのかな。そもそも生とはどう定義するものか、って話になりそう。」
 
「私、千年桜とはもう少し信頼関係が築けるように接してみます。このままでいるわけにも、このまま終わるわけにもいかない…。」
 
「俺も輪廻の指輪ともうちょっと仲良くならないといけないんだろうな。声が聞けることはあっても、それは他人の誰かのものであって、器のものじゃない。」
 
「僕は、そもそもこの力の源泉となった器について知るべきかな。姉の状況改善にも繋がる気がしてきたし。あとはもう少し杠さんの変化と二つの指輪の関係についても知りたい。」
 
「ああ、それはもちろん問題ない。改めて話すよ。」
 
「私は…、どうして器を扱えないのか知らないと納得できない。籠様に聞いてみなくちゃ。」
 
「あら、みんなやることを見つけられたかな。良かったのかしらね、これで。」
 
「んー、とはいえ、ユメカゴとしてはどうなんでしょう。籠様のミッションがあれば動く流れみたいだけど、器の影響がプラスに作用しても悪用されればとんでもないことになる可能性もあるし、マイナスに作用すれば姉のようになる可能性だってある、ということが事実なら僕らの手で一つでも多くの器は回収していかないと危険なんじゃないでしょうか。」
 
「たしかにそうだな。」
 
「籠様にも話を聞いてみたいけど、それと並行して器探しをすべき、って気がする。あ、でも有力な情報源だった情報屋さんとは瞬も杠さんも真白さんも連絡が取れないんだっけ。」
 
「あ、私一つ確認しなきゃいけないことを思い出したわ。ちょっとみんな付き合ってもらえない?」